弁護士コラム

出会い、別れ・・・そして再会

弁護士 土居 聡

1 その子は、16歳だった。

椅子に腰掛けたまま、横長の細目を上目遣いにしてこちらを見上げていた。少し色黒で、細身の身体・・・背筋を伸ばして椅子に座っているから、こちらまで緊張してくる。密室で二人きりだからなおさらだ。一言二言、話をして気分を落ち着けようとするが、鼓動がなかなか収まらない。

なんでこんなに可愛い顔をした子が・・・。   

この子との付き合いはここから始まった。そして、この子との出会いが自分の運命を変えた。


2 出会いから4週間・・・土・日を除きほぼ毎日会いに行った。その子は、いつも密室に居て、こちらを上目遣いで見てきた。

そして、出会いから4週間目の木曜日・・・

「99%少年院に行かなあかん。でも1%だけ、どうしてもためらう気持ちがある。私はその1%に賭けてみたい。」

すばらしい内容の中間処分が出された。

そう、この子(男)は非行をして鑑別所に入所していたのだ。


3 毎日のように面会に行った効果で、4週目には友達のように話をすることができた。彼の頑張りを間近で見て、どうしても助けてあげたいと思った。そして、良い結果が出た。

しかし・・・その後、彼の生活リズムは乱れ、結局少年院に送致されてしまう。とにかく残念だったし、悔しかった。処分の前日には、家庭訪問をして彼の部屋で二人きりで話をした。いろいろな話をした。将来のことも話した。

次の日、彼は再び鑑別所に入所することになった。そして、それから1週間ほどして少年院へ行った。

その日から半年ほど連絡がなかった。友達だと思っていたのは自分だけだったのか・・・別れを寂しく感じていた。


4 少年院に送致されて半年ほど経ったころ、1通の手紙が届いた。彼からだった。いろんな事情でこれまで手紙を出せなかったけど、ようやく出せるようになったと書いてあった。

その手紙が届いてから1か月の間に、3通の手紙のやり取りをした。文通・・・我慢ができなくなり、彼に会いに行くことにした。こうして、再会の機会は突然におとずれた。

5
「入ります!」
「来ていただき、ありがとうございます!」
「お願いします!」

まったく年齢不相応の言葉遣いをする彼がそ こにいた。ショックだった。ロボットかお前は・・・少年らしい愛らしさは消え、まるでロボットのような彼がそこにいた。

ここは矯正施設。ここでの生活では、ロボットのような言葉遣いをする必要がある。しかも、面会中は職員の立ち会いがあるから、こっそり普段の話し方をすることもできない。彼はロボットにされてしまうんじゃないか・・・そんなことを考えながら、あっという間に面会時間の30分を使い切った。

最後に部屋を出る時、

「先生に出会えてよかったです。希望をくれたから。」

彼が一言だけ言って足早に去って行った。最後の瞬間に言うのは反則だろ・・・こみあげてくるものを我慢しながら部屋を後にした。

初心のイラスト

6 希望・・・それは少年たちにもっとも手にして欲しいものだった。少なくとも、これまで出会った非行少年たちの多くは、希望を持っていなかった。正確に言えば、彼らは希望を持つことができなかった。彼らとの会話の中では、

「誰も自分たちのことなど気にしていない。」
「どうせ~だろう。」
「自分は他の子と違って何もできない。」
そんな言葉が飛び交っていた。

それからだ。少年事件を担当する時は、少年に希望を与えるよう努力をしてきた。成功したこともあれば、失敗したこともある。そして、失敗をなじられたこともある。

でも、彼の最後の一言で迷いがなくなった。これからもたくさんの希望を与えていきたいと思う。

彼らは希望を求めている。だったら、希望を与える人が必要だ。強くそう思う。  

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